TED|インポスター症候群を生かす マイク・キャノン=ブルックス|成功する人は「自信がない自分」を感じるくらい自問自答するという話

置かれている状況に自分が追いつけていない気がする。

役職を与えられた、賞をもらった、大きなプロジェクトや契約を成し遂げた。それなのに、これは本当なのか、自分にはそんな力はあるのか、あれはたまたまだったんじゃないか。そんな不安に苛まれる。

こういう状態に陥る症状をインポスター症候群というらしい。

能力があることを示す外的な証拠があるにもかかわらず、自分は詐欺師であり、成功に値しないという考えを持つ。自分の成功は、単なる幸運やタイミングのせいとして見過ごされるか、実際より能力があると他人を信じ込ませることで手に入れたものだと考える。 Wikipediaより

成功したのに抱える不全感。なんだか不自由だなぁ、、って感じるけど、結論を言えば、成功する人はこうした心理が働くから成功するという見方もできるという話。

成功者はみんなインポスター症候群?成功してるのに?

このTEDは起業家Mike Cannon-Brookes(マイク・キャノン・ブルックス)さんが語る
How you can use impostor syndrome to your benefit。

日本語にすると「インポスター症候群、どうすれば良い効果をもたらすことができるのか」といったところでしょうか。

Mike Cannon-Brookesさんは、ソフトウェア会社Atlassian(アトラシアン)の共同設立者であり、共同CEOを勤めている方。タスク管理アプリのTrelloを開発した会社だったりする。Cannon-Brookesさんは純資産98USドルを持っていると言われている。そんな世間では「成功者」とされるようなMike Cannon-Brookesさんは、自分がインポスター症候群だという。

状況が身の丈にあっていないと感じる経験「人事部の経験ないのに人事部長を面接するとか」

前半の3:30位までは、自分の経験を踏まえながら「そう言う人、多いんじゃないですか?」と語りかけてきます。

Cannon-Brookesさんは経営者として何千という従業員を抱え、地球上の何百万人という人がその会社のつくるソフトウェアを利用している現状を踏まえ、

「だから仕事に関して 私が自分で何をしているか 分かっていると 思うことでしょう 打ち明けると 私はいまだに 何をやっているか 分からないと感じることがよくあります」0:52

「力不足な自分が偽物のように 感じられることはありませんか? ただ勘とでまかせで 誤魔化してきただけで」1:11

「最初の人事部長となる人の 面接をしながら 人事部のある会社で 働いたことがなかったとか」1:31

「始めたばかりのころに 誰かから電話で 支払勘定を求められ 「金をよこせと言ってるのかな くれると言っているのかな?」と 戸惑ったものです」1:56

こんな例をいくつか挙げながら、ご自身の感じてきたこと、みんなもそうじゃないか?ということを語ってくれます。

実は俺だけじゃないどころか、割とみんなそうだった

そして、3:45あたりから、これとどう向き合ったら良いか、という話を展開してくれます。

「私は別に「さあ始めよう」というような やる気を出させる話を しようというのではありません 私自身のインポスター症候群の 経験を振り返り それをどう手なずけ 良い方向の力にしてきたか ということです3:47

彼は会社を立ち上げどんどん成功の階段を登って行き、ついには世界の舞台にまで上り詰めた。40億ユーロと70名の従業員を抱えるまでになった Cannon-Brookes さんはそうした不安を40年続く3万人の従業員を抱えた起業家 ベルミロ・デ・アゼヴェドさんに告白。するとアゼヴェドさんは「自分も同じ。他の経営者もたぶん」ということを言ったのだそうです。

「これは私にとって 大きな気づきの瞬間でした 1つは他の人も同じように 感じているのが分かったこと もう1つは どんなに成功しても その感覚は消えないと分かったことです」6:43

突っ込んで、後悔して、でも前に進んでいく

テスラが大型産業用蓄電池でサウス・オーストラリア州の電力危機を解決できると言っているのを Twitter で見た Cannon-Brookes さんは考えなしにツイートしまくって「本気で言っているのか」と彼らに挑んだそうです。その行動はまたたく間に話題を大きくし、世界を巻き込み、自分が気がついたらその舞台に上がっている状態になったのだそうです。メディアから「専門家としての意見を聞きたい」と求められた自分は、おもちゃを動かす単三電池と産業用蓄電池の違いもわからない自分だったといいます。けれど、臆して退くことは、オーストラリアの再生可能エネルギー普及を遅らせることになりかねない状況。そんなとき、彼はどうしたのか。

「自分に取れる唯一の道は 固まってしまわずに 学ぶことだと思いました それで私は1週間かけて できる限り学ぼうとしました」11:01

「私は人生のその時点までには 自分が偽物であることを よく自覚していました 背の立たない深みにいることを 分かっていました でもそれで固まってしまう代わりに できる限り学び 馬鹿に見えることの恐れを モチベーションにして それを前向きの力に 変えようとしたんです」11:58

【感想】多くの人にとって分かれ道になるのはここかもしれない

ここから約1分30秒、Cannon-Brookesさんは畳み掛けるようにそのコツを語ってくれます。僕は「それでいいんだ!」と安心しましたし勇気をもらいました。

似たようなことをマナブさんもホリエモンさんも語ってました。そして、僕の小さなこれまでの体験を考えてもそれは当てはまっています。

「これに手をつけると大変なのだろう。そもそも自分はこのことを知らないし力もない。そんな身の丈にあっていないものに手をつけてたいへんな思いをするのも、失敗してみんなに迷惑をかけるのも怖い」

そんな場面ばかり。けど、今の自分に見える抜け道は唯一それで、それをしなければ衰退していく一方であることがわかっていたので、僕は「ダメ元」で「でも、やるからには精一杯やる」ということを頑張ってみただけでした。

振り返ると多くの人はここで分かれているんじゃないかと思います。自己保身といえばそれはそうかもしれないけれど、真面目で無責任な行動は取れないという方に多いのかもしれない。

初めから「専門家」と呼ばれる人なんていないし、どこまでいけば「専門家」なのかわからないし、「専門家」にたどり着くまでに失敗のない人なんていないし、むしろトライアンドエラーを通じて身についていくものだし、成功の約束されたゴールなんて誰にも保証はできないし、できる限り迷惑をかけないように失敗を少なくすることは大事だけど、そうやって頑張っていくことが良いのかもしれない。

ということで、そんなことを考えさせてもらった今回のTED
How you can use impostor syndrome to your benefit | Mike Cannon-Brookes
でした。